生物分子科学科

ハーシーとチェイスの実験 (Hershey-Chase experiment)

 DNAがバクテリオファージの遺伝物質であることを証明した実験としてよく知られている。A. D. HersheyとMartha Chaseにより1952年に発表された。バクテリオファージは1940 年代より遺伝学の実験材料とされ、バクテリオファージを標識するのに用いられたリンとイオウの放射性同位元素は1930年代から40年代にかけてサイクロトロンや原子炉で人工的につくられるようになり生物学の実験に使用されるようになっていた。
 放射性のリン(32P)を含む培地で生長させた大腸菌にT2ファージを感染させ溶菌させるとDNAに放射能をもつ32P標識ファージが得られる。放射性のイオウ(35S)を含む培地で生長させた大腸菌からはタンパク質に放射能をもつ35S標識ファージが得られる。32P標識ファージを大腸菌に感染させたのち放射能がどこに存在するか調べることによりファージのDNAの行方を追うことができる。また、35S標識ファージを用いて同様の実験を行うとファージのタンパク質の行方を追うことができる。ファージが大腸菌に感染するときDNAが大腸菌の細胞中に入る。タンパク質は大腸菌の細胞表面に付着するのみであり撹拌すると大腸菌から離脱する。DNA が細胞中に入ればタンパク質が離脱してもファージの増殖と溶菌が起きる。また、もとのファージのDNAの放射能は新しく増殖したファージにとりこまれるが、タンパク質の放射能は新しく増殖したファージにほとんどとりこまれない。これらのことからDNAが遺伝物質であることが示された。 
 本学科ではこの実験の一部を3年生の物理学実験において課題のひとつとして行う。

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