生物学科

ヘモグロビン

 前回の生物学の新知識では植物に存在する「青いタンパク質」と「赤いタンパク質」を紹介しました。動物にも「青いタンパク質」と「赤いタンパク質」は存在します。動物に存在する「青いタンパク質」は植物のプラストシアニンと同様に銅を含むタンパク質でヘモシアニンといいます。このヘモシアニンはエビやカニ等の節足動物やイカやタコ等の軟体動物が持っています。また、動物に存在する「赤いタンパク質」はチトクロムcと同様に鉄を含むタンパク質でヘモグロビンがあります。このヘモグロビンは高等動物である我々を含む哺乳類が持っています。これら2種のタンパク質はいずれも呼吸に関与するタンパク質です。今回は私たちにもなじみのあるヘモグロビンについて紹介しようと思います。

赤いタンパク質:ヘモグロビン

 ヘモグロビンは赤血球中に存在し、赤血球の重量の約3分の1をヘモグロビンが占めています。残りの3分の2のほとんどは水分です。従って、赤血球中のタンパク質のほとんどがヘモグロビンであるといえます。赤血球の赤い色はこのヘモグロビンの色なのです。みなさんに赤血球の働きは何ですか?と質問すると、肺で取り入れた酸素を筋肉などの組織に運ぶこと(酸素運搬)です。と答えると思います。その答えは正しいのですが、実際に酸素と結合しているのは赤血球の中にあるヘモグロビンなのです。ヘモグロビンは2種のポリペプチド(成人ヘモグロビンではα鎖とβ鎖)が2本ずつの計4本に、これら各々のポリペプチドに鉄を含むヘムを1分子づつ含有した構造をしています。従って、1分子のヘモグロビンは4分子のヘムを持っています。この?分子のヘムが酸素と結合し、組織に酸素を運んでいるのです。

 ヘモグロビンの酸素との結合はヘモグロビンの高次構造の変化により影響を受けます。すなわち、ヘモグロビンに1分子の酸素が結合すると酸素と結合していない他のヘムがより酸素と結合しやすい状態に構造変化します。またヘムから酸素が離れると他のヘムも酸素を遊離しやすい状態に変化します。それにより、酸素濃度の高い肺では酸素とより結合しやすくなり、また、酸素濃度の低い組織では酸素が遊離しやすくなります。その結果、ヘモグロビンは効率よく酸素を組織に運搬することができるのです。

赤いタンパク質:ヘモグロビン

様々な色のヘモグロビン代謝産物

 赤血球は寿命(約120日)がくると脾臓等のマクロファージに貪食され、赤血球中のヘモグロビンは分解されてグロビンとヘムになります。このうちグロビンはアミノ酸に分解され、タンパク質合成に再利用されます。またヘムはさらに鉄とプロトポリフィリンに分離します。鉄もグロビン同様にヘモグロビン等の合成に再利用されます。残りのプロトポリフェリンは環状構造が切断され、緑色のビリベルジンとなります。ビリベルジンはさらに還元されて黄色のビリルビンに変化します。ビリルビンは血液中のタンパク質であるアルブミンと結合して肝臓に輸送されます。肝臓でビリルビンはグルクロン酸と抱合した後、胆汁の成分として捨てられます。肝臓の機能が障害された際に皮膚の色が黄色くなる黄疸という症状がありますが、これは肝臓でのビリルビンの処理が遅れて、血液中に黄色いビリルビンが多量に存在するために皮膚の色が黄色くなることです。ヘモグロビンは赤色から緑色のビリベルジン、そして黄色のビリルビンと色を変えて代謝されるのです。

ヘモグロビンの崩壊

血液生物学研究室

丹羽和紀